糖尿病で緊急入院が決まったとき、治療の心配と同じくらい頭を占めたのがお金のことでした。
なぜなら僕は、医療保険に入っていません。
2年前に保険を大きく見直して(その経緯はこちら)、医療保険は解約。「入院したらどうするの?」と言われながらの決断でした。そして今回、本当に入院した。答え合わせの時間です。
この記事では、10日間(9泊)の入院で実際にかかった費用を、請求書ベースで全部公開します。先に言っておくと——想定より高かったです。その理由も含めて、正直に書きます。
入院そのものの経緯はこちら → 前編:健康診断D判定から即入院になった話/後編:血糖値426→116、10日間の全記録
先に結論:退院時に払った金額

| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 医療費の自己負担(高額療養費適用後) | 168,194円 |
| 食事代(1食490円×29食) | 14,300円 |
| 差額ベッド代(個室9日×11,000円) | 99,000円 |
| その他(病衣レンタル等) | 3,300円 |
| 退院時の支払い合計 | 284,794円 |
さらに後日、加入している国保組合の入院給付金(日額4,400円×10日=44,000円)が支給される見込みなので、実質負担は約24万円。確定申告の医療費控除まで含めれば、最終的には20万円前後に落ち着く見込みです。
「医療保険なしで10日間入院して、この金額」——これが結論です。ここから、この金額の中身を分解します。知らないと損する話が3つあります。
誤算その1:「自己負担は月8万まで」ではなかった——高額療養費の“区分の罠”
高額療養費制度のおかげで、医療費の自己負担には1ヶ月の上限があります。ネットの記事はだいたいこう書いてあります。「上限はおよそ月8〜9万円」。
僕もそう思っていました。でも請求書に印字されていた自己負担は168,194円。倍です。
からくりは「所得区分」でした。上限額は前年の所得で変わります(70歳未満の場合)。
| 区分 | 年収のめやす | 月の上限(ざっくり) |
|---|---|---|
| ア | 約1,160万円〜 | 約25万円〜 |
| イ | 約770〜1,160万円 | 約17万円〜 |
| ウ | 約370〜770万円 | 約8〜9万円 |
| エ | 〜約370万円 | 57,600円 |
| オ | 住民税非課税 | 35,400円 |
※正確な計算式や最新の金額は厚生労働省の資料でご確認ください。
僕は前年、歩合給がよく伸びた年でした。その結果、区分が「ウ」ではなく「イ」になっていて、上限が約17万円に。去年頑張って稼いだ分、今年の医療費の天井が上がっていたわけです。
これは制度の設計どおりで、文句を言う筋合いはありません。でも「入院しても8万円で済む」と思い込んで生活防衛費を薄くしていたら、危なかった。自分の区分を知らないまま「月8万説」を信じるのは危険です——これがこの記事でいちばん伝えたいことかもしれません。
さらに細かい盲点をひとつ。この区分は毎年8月に切り替わる年度制(8月〜翌7月)です。僕の入院は7月=一昨年の高い所得がギリギリ適用される月でした。もし入院があと2週間遅ければ、新しい区分が適用されて約8.6万円安かった計算。これはもう、笑うしかありませんでした。
(自分の区分は、加入している健保・国保組合のサイトか、マイナポータルの所得情報で確認できます)
誤算その2:差額ベッド代は「聖域の外」——99,000円の自腹
もうひとつの大物が個室代99,000円。
最初は大部屋にいたのですが、同室の方の咳で眠れない夜が続き、悩んだ末に個室(1日11,000円)へ移りました。血糖値を治しに来て睡眠を削ったら本末転倒だ、という判断です。
ここで大事なのは、差額ベッド代は高額療養費の対象外・全額自費ということ。医療費には天井がありますが、個室代は青天井です。そして入院してみて分かったのは——「自分は個室じゃないと眠れないタイプだった」という、入ってみるまで分からない事実でした。
(なお、病院都合で個室に入れられた場合は差額ベッド代を請求されないルールがあります。同意書にサインしたかどうかがポイントです)
それでも家計が壊れなかった理由:「3点セット」
想定超えの請求でも、慌てずに払えました。守ってくれたのはこの3つです。
- 高額療養費制度——上限は思ったより高かったが、それでも「天井がある」こと自体が最強。総医療費は63万円超だったので、制度がなければ3割でも19万円、10割なら63万円でした
- 国保組合の独自給付——僕の組合には「疾病入院給付金」があり、入院1日あたり数千円が出ます。民間保険に入っていなくても、公的な仕組みの中に入院給付金が組み込まれていました。あなたの健保にも独自給付があるかもしれません。「健保名+付加給付」「健保名+入院給付」で検索を
- 生活防衛費——最後は貯蓄。28万円を「痛いけど、払える」で済ませられる残高があること
マイナ保険証の限度額自動適用は本当に効いた
昔は「限度額適用認定証」を事前申請する必要がありました。今は入院受付でマイナ保険証をかざして同意しただけで、退院会計が自動的に上限額で止まりました。書類ゼロ、申請ゼロ。ここは文句なしに便利になっています。
入院の持ち物についてはこちらにまとめました → はじめての入院で「持ってきてよかった物」8選(最強の持ち物はマイナ保険証です)
医療保険が「必要な人」もいます
「医療保険は全員不要」とは言いません。3点セットの揃い方で答えは変わります。
| こんな人 | 判断の目安 |
|---|---|
| 貯蓄が生活費3ヶ月分未満 | 掛け捨ての安い医療保険を「つなぎ」にする価値あり |
| 自営業・フリーランス(傷病手当金なし) | 収入補償の検討価値が高い |
| 所得が高め(区分ア・イ) | 上限が17〜25万になる前提で防衛費を厚めに |
| 個室を希望したいタイプ | 全額自費なので貯蓄の上乗せか入院日額の備えを |
| 3点セットが揃っている人 | 公的保障+貯蓄で十分な可能性が高い |
僕の反省をひとつ書くと、「入っていなかった」ことより「自分の上限額を知らずにいた」ことが問題でした。結果オーライでしたが、知らない無保険と、調べた上での無保険は別物です。
40代がやるべきは「保険の見直し」の前に「公的保障の棚卸し」
保険を売る側の話を聞く前に、すでに持っている保障を数えましょう。チェックリスト:
- 高額療養費の自分の区分と上限額を知っているか(←今回の僕の教訓)
- 健保の付加給付・独自給付を調べたか
- 傷病手当金の有無(会社員の健保なら給料の約2/3×最長1年半。国保系は原則なし)
- 生活防衛費は生活費何ヶ月分あるか(個室代も想定するなら+10万)
- 民間保険は「公的保障の穴」だけを埋めているか
この5つを埋めてから見直すと、保険選びの精度がまるで変わります。棚卸しの土台として、家計の20年を見える化するライフプランシートの作り方(実体験)もあわせてどうぞ。
図解でおさらい
ここまでの内容を1枚にまとめました(保存・シェア歓迎です)。

まとめ
- 医療保険なしの10日間入院、退院時の支払いは284,794円(給付金・控除後の実質は20万円前後の見込み)
- 高額療養費の上限は所得区分で倍以上変わる。「月8万説」を鵜呑みにせず自分の区分を
- 差額ベッドは制度の外。個室派は+1万円/日の覚悟を
- それでも「高額療養費+健保の独自給付+生活防衛費」の3点セットで家計は守れた
- 保険の要不要は3点セットの揃い方次第。まず公的保障の棚卸しから
これは僕の一例です。保険の最終判断は、あなたの家計と健康状態で。必要なら専門家と一緒に。








